インドネシア ~フェロモン利用で環境にやさしい農業を~
私は2007年から2年間シンガポールに駐在しました。言うまでもなくシンガポールに農業市場は無く、同国を拠点に東南アジアでのビジネス展開を図るものです。アフリカでのビジネス経験の長い私にとってアジアは全く初めての経験でした。毎週のように周辺国に出張し、各国の首都から周辺地域、そして農業の重要地域へと出張のパターンも徐々に変化しました。「その国の農業と食の安全にいかに貢献できるか」という我々のテーマを念頭にビジネスを行います。そして、いつしかインドネシアに足繁く通い、このHPでも紹介のある、フェロモンを利用した害虫駆除に熱心に取り組むようになりました。

インドネシアは人口2億5千万人を有し、アジアでは中国、インドに次ぐ規模で、同国がアジアで独自の影響力と存在感を示すのはこのあたりに由来するのでしょう。主食は米で、水稲面積は日本の6倍。熱帯の気候を利用して1年間に2~3回の収穫がなされます。当然、米以外にも様々な農作物が栽培されていますが、中でもエシャロットがインドネシアの農業と食生活を強く特徴付けます。エシャロットはネギ科の多年草で、日本のラッキョウに似たものです(日本で「根らっきょう」と呼ばれているもの)。乾燥させてスライスした実を油であげて、ちょうど日本で薬味ネギを色んな料理に使うように、あらゆる料理に味をそえるために使用されます。食材としても、農業としても、エシャロットのインドネシアにおける重要性は群を抜いています。

さて、そのエシャロットですが、水稲の裏作として栽培されます。雨季が乾季に変わる6月頃、つい先日まで見渡す限り水田であったのが、見渡す限りのエシャロット畑に変わります。ネギの緑がどこまでも広がります。単一の野菜がこんなにも広範囲に栽培されているのを見たのは初めてで非常に驚きました。この作物に甚大な被害をもたらすシロイチモジヨトウという害虫がいて、現在それを防除するために殺虫剤が散布されています。しかしながらこの害虫は、いわゆる殺虫剤抵抗性がつき易いため、新しい殺虫剤を導入したとしても時間の経過とともに効かなくなり、イタチゴッコが続いています。
シロイチモジヨトウの幼虫
そこで我々はフェロモン技術を応用して、この害虫の駆除の取り組みを始めました。それは昆虫の性フェロモンを用いて対象害虫のオス・メスの交信をかく乱して交尾を阻害し、次世代の発生を抑制する環境への負荷の低いテクノロジーです。広範囲で使用することで、より高い効果が期待できます。ただし見た目には広範なエシャロット畑でもお百姓さん一人あたりの農地は50メートル四方ほどの小規模農業。ということでそこには無数のお百姓さんが存在することになりますが、彼らは長年の経験に基づいて独自の防除法を築いており、そして何よりもコンサバ(保守的)!そのような方々にまずこのエコ商品を理解いただき、実際に使用いただくことは、当社にとってだけでなく、現地代理店にとっても大きなチャレンジです。
私は駐在を終えて帰国した今も引き続き本社からこの案件に取り組んでいます。インドネシアとはどんな国か。どうすればこの防除法に興味を持ってもらえるか。エシャロットの農法に変革をもたらすべく、今も現地代理店の皆さんと日々語り合っています。








