ハンガリー ~ヨーロッパの中心で愛を叫ぶ~

レポーター:アグリサイエンス第二部 米州・オセアニアチーム所属 山縣 智繁(ハンガリー元駐在員)

ドナウ川と国会議事堂(中央)

みなさんはハンガリーという国をご存じでしょうか。
私はハンガリーの首都ブダペストに駐在し、Sumi Agro Hungaryという住友商事グループの会社で2年間働いていました。私自身、駐在するまではハンガリーのことを殆ど知らなかったのですが、この国が持つ多様な歴史と温かく人懐っこい人々、そしてドナウ川に代表される美しい景観に触れるうち、今ではすっかりハンガリーに魅了され、第二の故郷のように感じています。そんな小国ながら魅力溢れるハンガリーのことを、皆さんにも少しでも知って頂ければと思います(タイトルと本文は関係ありません)。

ハンガリーはヨーロッパのおよそ中心に位置する、人口1千万人ほどの小さな国です。ハンガリー人(ウゴル族マジャール支族)は千年以上昔にウラル山脈近辺から現在の場所に移住して来たと言われており、民族も言語も周りのヨーロッパの国々とは異なります。他のヨーロッパ人からすると、ハンガリー語は「わけの分からないとても難しい言葉」のようで、ハンガリー人自身も「自分たちは世界で一番難しい言葉を話している」(真偽はともかく)と思っている節があります。ヨーロッパの中心にありながら、その独自の言語や文化を今日まで残していることを、ハンガリー人たちは大変誇りに思っています。

ハンガリーと言えば、あまり知られていませんが、冷戦の時代にオーストリアと組んで鉄のカーテンを開放し、多くの東ドイツ国民を西側へと亡命させた歴史があります。当時、ハンガリーは東欧の中で比較的に民主化が進んでいて、東西に分けられていたドイツ人がこっそり落ち合うことのできる唯一の場所でした。ハンガリーの西にショプロンという町がありますが、1989年8月19日にこの町の近くの国境が開かれ、ピクニックを名目に集まっていた多くの東ドイツ人が西側へと移動していきました。これは汎ヨーロッパピクニックと呼ばれる歴史的な事件で、後のベルリン壁崩壊につながります。

2015年になった今でも、移民問題に揺れる欧州において、ハンガリーはヨーロッパの中心地として東西のバランスを取る重要な役割を果たしています。

汎ヨーロッパ・ピクニックを紹介する記事と写真

ハンガリーの首都ブダペストを通りオーストリア・ドイツ方面を目指す難民(2015年)

ハンガリー人についても少し話そうと思います。私は周りがハンガリー人だけの会社で2年間働いていました。その限りですが、ハンガリー人といえば真面目だけどユーモア好き、そして芯がしっかりしている、という印象を持っています。一方で、ノーベル賞受賞者やオリンピックのメダリストも多く、マッチやボールペンといった発明もハンガリー人によって生み出されていることから、「非常に優秀な民族」だと言う人もいます。欧州の中心で様々な大国に翻弄されながも生き抜いてきた、ハンガリー人ならではの個性・強みなのかもしれません。

ハンガリーを語る上で、ドナウ川をはじめとした素晴らしい自然についても外せません。首都のブダペストはドナウの真珠とも呼ばれ、町の中心を流れるドナウ川とその両岸の美しい景観は世界遺産にもなっています。また、ハンガリーは農業国としても知られ、ブダペストから少し離れるとそこでは大平原や広大な農地が目に入ってきます。私の働いていたSumi Agro Hungaryという会社では、農薬や肥料、種子 等、農家の方々が必要とする様々な資材を販売しています。商品を販売する上で消費者のニーズを把握することは欠かせませんので、私自身もスタッフと共に毎週のように地方へ行って農家を訪問していました。農家の元へ向かう道すがら、特に春から秋にかけて見られる美しい自然には何度も癒され、また感動したことを覚えています。

見渡す限りの菜の花畑

ブダペスト・ドナウ川の夜景

Sumi Agro Hungaryは来年設立24年目を迎える、住友商事の事業会社であるSummit Agroグループの中で最も歴史のある会社です。設立以来農薬を中心とした農業資材を取り扱っており、総勢約20名と小規模な会社ながら、現地の農業発展と食糧増産に貢献することをスローガンに、日々農家を訪問し、消費者のニーズに合わせた商品の普及販売と技術指導を行っています。私が駐在した頃はまだ入社3年目でしたが、そこではじめて本当の意味で「商売とは顧客・消費者のために働くものである」、という基本を学べたように思います。現在私は住商アグロインターナショナルに戻り、ハンガリーに駐在していた頃とは違う業務を行っていますが、Sumi Agro Hungaryで学んだ現場体験が大きな財産になっています。

欧州はさまざまな規制が厳しく、商売をしていく上で困難も多いですが、それでも私たち住友商事グループが仕事にやりがいを感じられるのは、常に現場で顧客・消費者の為に働いているという実感を強く得られるからだと思います。私にとって、ハンガリーは初めて住んだ異国の地でしたが、このユニークな歴史と美しい景観を持った国で(文字通り泥臭く)刺激的な日々を過ごせたことを感謝しています。 住友商事の経営理念である、「事業活動を通じた豊かさと夢の実現」のため、これからも情熱を持って行動していきたいと思います。

ハンガリー名物鍋料理 グヤーシュを囲んで