グローバルレポートGLOBAL REPORT

「アルゼンチン ~南米のパリと大自然~」メインイメージ

アルゼンチン南米のパリと大自然

皆さん、アルゼンチン聞いて何を思い浮かべますか?マラドーナなど、フットボールのイメージをお持ちの方が多いかもしれません。日本との時差は12時間、まさに地球の反対側に位置しており、南北に3,500キロ以上の長さに及び、日本の約7.3倍もの広大な土地に豊かな自然、きれいな街並みと陽気なラテン文化を持つ国です。
私は約1年半アルゼンチンに駐在し、住友商事の事業会社であるSummit Agro Argentina S.A(以下SAA)に勤務していました。約1年間を首都ブエノスアイレスで過ごし、半年間は地方に拠点を移し、農家さんや畑を訪問しながら文化と農業を肌で体感いたしました。

アルゼンチンでは、人種はヨーロッパ系が97%を占めており、ブエノスアイレスは“南米のパリ”とも呼ばれるほど、街並みはヨーロッパを連想させます。皆とても社交的で、お喋りが大好きです。異国から来た私にも気兼ねなく話しかけてくれ、初対面でも受け入れてもらえることは一人で駐在する私には非常に嬉しいことでした。アルゼンチンを語るうえで、フットボールの他にタンゴ、アサード、マルベックの赤ワインは欠かせません。この国発祥の踊りであるタンゴは、とても優雅且つダイナミックです。アルゼンチン音楽と融合するこの踊りはアルゼンチンの文化そのものを表現していると感じました(私もタンゴ習得にトライしましたが、想像を絶する難しさであったので断念しました…)。食文化としてアルゼンチン人がこよなく愛するのは、アルゼンチンバーベキュー“アサード(Asado)”とアルゼンチンワインで最も有名なマルベックという品種の赤ワインです。毎週末ワインやFernet Coca(Fenet Blancaというリキュールとコーラを混ぜたもの)というお酒を夕方から飲みながらアサードを準備し、たくさんのお肉を食べながら家族や友人と会話を楽しむのがこの国の日常です。SAAのテクニカルセミナーやデモ試験のイベントでは、問屋や農家の方を畑に招いた後、アサードを食べながら親睦を深めます。

  • アルゼンチンバーベキュー“アサード(Asado)”
  • アサードを食べながら セミナーの様子

そんなアルゼンチンですが、経済は不安定であり、問題を抱えています。1816年の建国以降何度もデフォルト(債務不履行)を経験しており、私が駐在中の2020年5月にも、ついに9度目のデフォルトへ陥りました。様々な問題が複雑に絡み合い経済の悪循環は続き、アルゼンチンペソの為替下落や高インフレは止まりません。現地に駐在する前から知っていたものの、現地でいざ生活をしてみるとその深刻さがよくわかります。私が着任してから帰任するまでの1年半で、アルゼンチンペソの価値は半分以下になりました。皆さんの銀行の貯金の価値が1年半で半額になることを想像していただけるとわかりやすいかもしれません、日本では考えられない事態です。また2019年はインフレ率年間50%を記録しており、レストランやスーパーは毎週メニューや商品価格を書き換えて値上げを実施し、電気代なども公共料金もぐんぐん上昇していきます。このような環境での生活は決して楽ではありません。いかに日本が安定した国かよくわかります。

アルゼンチンの主要産業は農牧産業であり、輸出のうち5割近くを農産品が占めています。特に穀物関連品の輸出は同国の外貨獲得の要であり、アルゼンチン経済を支えています。その重要性から、政府はCOVID19パンデミックに因る農業活動への制限は最小限にとどめたほどです。中央部に位置するパンパと呼ばれる地域では大豆、トウモロコシなどの穀物、西部ではワイン向けのブドウ、南部ではリンゴ・梨など、様々な作物が生産されています。畑は私たちのビジネスの現場となり、より良いソリューションを農家さんへ届けるためにアルゼンチン全域でSAAのスタッフは日々汗を流しています。農薬の試験も自社で実施し、また農家や問屋さんを集めてのセミナーを畑で頻繁に開催しています。

  • テクニカルセミナー
  • セミナーの様子

この国の農業に貢献することは、アルゼンチンそのものの発展と成長への貢献につながります。当社はSAAと共に、少しでも多く現地農業へ貢献できるよう力を尽くしています。現地での1年半の期間は自分の携わっている日々の仕事がどんな意義があり、どのように世界の役に立っているのかを肌で感じることのできた、かけがえのない時間となりました。駐在生活では現地の皆様の優しさや日本からのサポートのおかげで大変有意義な駐在生活を過ごしました。皆への感謝と“何のために日々仕事をしているのか”という視点を忘れずに仕事をしていきたいと感じさせられる1年半のアルゼンチンでの生活でした。